『デスクトップリアルマッコイ』シリーズ 机に夢を届ける職人
2018/01/29 19:00
さまざまな方法で『ドラゴンボール』に関わり、『ドラゴンボール』に愛を抱き、『ドラゴンボール』ファンのために最上級の“モノ”を届ける職人たち=アルチザン。彼らに注目する連載企画、それがDRAGON BALL Artizanです。


今回は『ドラゴンボール』フィギュアの世界に迫る、メーカーシリーズ第2弾。
『ドラゴンボール』の名場面を細部まで再現した、高品質なデスクトップフィギュア「デスクトップリアルマッコイ」シリーズを担当している、メガハウス山内さんにお会いすることができた。数ある『ドラゴンボール』フィギュアの中でも特別な存在感を放つ、本シリーズ。他とは一線を画すテーマ性や造形へのこだわり、シリーズ最新作に至るまでのお話を訊いた。

■「デスクトップリアルマッコイ」シリーズ誕生の経緯は。

――どのような経緯で、このシリーズは生まれたんでしょうか?

このシリーズ以前から担当していたのが、「ドラゴンボールカプセル」というシリーズです。『ドラゴンボール』シリーズの名シーンを再現したジオラマを、ドラゴンボール形のカプセルに納めたコレクションフィギュアなのですが、どうしても小さいんですよね。「もっと大きいものを」と考えたときに、金額を若干上げて、名場面を再現して、となると「結局カプセルをでかくしただけじゃん!」となるのが一番よくないなぁと。なので、それとはコンセプトの全く違うものにしようと考えました。最初はダメ元だったんですが、『ドラゴンボール』の画集に収録されている扉絵などで、メカと一緒、恐竜と一緒という鳥山先生のこだわりが感じられるものをフィギュアにしようと、企画を進めていきました。まぁ結果的には、自分が欲しいものだったり、『ドラゴンボール』を読んでいた人の印象に残っているものを、立体化していくことになりましたね。


――シリーズ名の由来は?

あまり大きくなく、邪魔にもならないサイズで、机の上に飾って置けるという設定にして「デスクトップ」は名前に入れました。そして、「リアルマッコイ」というのは“逸品”という意味です。ちょっと長いんですけど(笑)。

■こだわりのディテール、その制作メソッドに迫る。

――記念すべき第一弾は、画集『鳥山明ザ・ワールド』表紙イラストの恐竜に乗った悟空でしたね。

例えば、一番最初の恐竜に乗った悟空。これを最初に選んだ理由の一つとして、色違いも出したい!と心に決めていたからなんですよね(笑)。


デスクトップリアルマッコイ ドラゴンボールZ 孫悟空01
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↑画集の表紙用に2種類描かれ、赤が表紙に使用された。

――このイラストは画集の表紙で、かなり細かく描かれていますからね。

画集まで見てる人って原作から入ってきた人が多いので、そうなってくると年代も上がってきて、自分たちと同じ年代なんだろう、ということで、必然的に商品は大人向けになりました。

――イラストでは描かれていない部分をどう立体化しているのですか?

見えない部分まで全部を固めてから、造形師さんに「これを造ってください」とはいかないんですよね。造りながら、「この絵なんだけど、ここはこうなんだと思う」とか「ここはまだ判明してないから、探すね」とか、造形師さんたちと試行錯誤しながら進めていく感じですね。
この恐竜の爪だって、三本爪なのか四本爪なのかで非常に迷ったんですよ。

――確かに恐竜には、親指に当たるものが普通ありますよね。

イラストでは、跳ね上げてる後ろ脚も地面に付いてる脚も、ちょうどその部分が隠れていて、「さぁ、どうしよう」と。色々考えている内に、地面に付いている脚がベタッと付いているかどうかだけを考えようって話になったんですよ。
それで、こっちに爪があるとしたら、骨格的に少し中心部分が浮いて、ベタ付きにはならないはずだ。イラストでは、おそらくベタ付きになっているぞ!こいつはきっと三本爪だ、という結論になりました。

――そういう風に考えていくんですね。イラストで一方向からしかデザインや構造が分からない中で、どうやって造っていくのかという部分は非常に気になっていました。

この悟空が被っている帽子も後ろはどうなっているのか、というところで、幸いにも鳥山先生が画集の裏表紙用に帽子とゴーグルだけが描かれていたんです。そういった資料からヒントを探し当てて進めていくんです。


↑これが裏表紙用に描かれた帽子とゴーグル。

■『ドラゴンボール』への想いが、産みの苦しみを楽しくさせる。

――2弾では、台座にカプセルコーポレーションのロゴがプリントされていましたね。

形は違っても、シリーズの共通で台座が付く仕様したかったんですね。2弾の自転車は、恐竜とは違って、いわばメカなので大変でした。チェーン部分の構造は最初はよくわからず試行錯誤しました。この自転車のチェーンは後輪からフレームの外に出ているんですよ。ここからでてるんだけど、最初はこのフレームの上を通ってるのに、交差しているところへの理解が難しく、苦労しながら造ってもらいました。


デスクトップリアルマッコイ ドラゴンボールZ 孫悟空02
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ジャンプコミックス34巻表紙イラスト
↑確かにチェーンがフレームの外に出ているデザインだ。

ですが、みんなで試行錯誤している中での会話は楽しいんですよ。走るときにこうなるよなぁとか、色々考えられて楽しいですね。絵で見ていたものが立体になった時、絵で見ていた時にはわからなかった所がみえるじゃないですか。それを補完する意味で立体としても面白いデザインだと思います。

――製作者側はそういうところを苦しみながらも、楽しんで造っているんですね?

3弾くらいから見えないところで遊び始めましたから。3弾のこれ、結構なスピードで走っているはずのシーンなのですが、バイクのメーターの数字は59にしているんです。そこはそんなに大々的には言ってないので、お気づきの方がいてニヤリとしてくれていたら嬉しいんですけど。


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↑3弾は扉イラストのメカを元に作られた。

あとはイラストでは見えないんですけれど、メーターの横にドラゴンレーダーくっつけたりとか。他にも色々工夫を凝らして、遊び要素を足したりしています。



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5弾の悟空とチチのバイクのメーターは、58キロなんですよ。悟飯にかけて。このイラストは悟空の道着やチチの髪の毛の色味が普段のアニメとはちょっと違う色で塗られているのですが、そこはイラスト通りに再現しました。そうしたら、今後色替えでオレンジ道着とチチの髪が黒いバージョンを出せたらいいなぁと思ったので。そのときのバイクのメーターは悟天、510キロにするのがいいかなとか考えたり。

――4弾は、また他の弾と毛色の違うものですね。

4弾の17号と18号の乗っているバイクはこれまでのものと違い、参考になる実車のものがないので、完全なる想像で造っています。原型ができて、みんなに見せたら「でかっ!」っていう感想が一番最初に来ましたね。たしかに実際にできてみると、バイクとしてはでか過ぎますよね。
実は、勝手に考えさせてもらえるっていうのは嬉しいんですよね。なので、なぜこうなんですか?と聞かれたら、絶対に答えられるように、些細な部分までに意味合いを用意して造ってもらっています。そうしないといい加減なものになってしまいますので。そこだけは注意はしてましたね。


デスクトップリアルマッコイ 04 人造人間17号&18号
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――考えることを楽しんでいるんですね。

僕は、自分で手を動かして造形できるわけではないので、そこで誰よりも頭を使わない限り、モノづくりに参加している意義が自分としては見いだせない。
「ここはこうだと思う。いや、あそこはこうだと思う」って言って、造形師さんたちと意見を戦わせたものが形になって初めて、自分もそこに参加した意義があると思うんです。
せっかく物を創る以上は色んなことを考えて、納得できる部分を突き詰めていかないと。出たときに、「自分が担当をした商品です」って胸を張って言えないと思うんです。


■「デスクトップリアルマッコイ」のこれから。そして、最新作は物語の原点へ。

――それでは、今後の展開をお聞かせください。

色々準備段階のものが多いです。結構サイズ的にも大きくて、凝ったものを立て続けに出してきたので、お客様のお財布事情も考えて、1回ちょっと冷静にスケジュール立て直さないといけないな、という感じですね。
でも、鳥山先生がインタビューで「僕は自分のこと、絵がうまいと思ってませんよ」という流れで、それでも「唯一上手に描けたと思っている」と仰ってた、この悟空と悟飯が乗っている二足歩行のメカは、いつか出したいと考えています。


↑週刊少年ジャンプ1990年37号ポスター用イラスト。
『ドラゴンボール大全集①』のインタビューで鳥山明は、10年の連載中に描いたもので「覚えているなかで、色も構図も上手くいったのはこれ1点だけかな」と答えている。

実は一度、可動フィギュアとして試作品を造っていて、ホビー誌にも載せていただいたり、展示会にも出したり、したのですけど、あまりに可動箇所を増やしすぎていたので、コストがスゴイことになってしまって。イラストを忠実に再現、という意味合いは片足で立つことも求められる、という点もあり。それで「ちょっと冷静になった方がいいね」という話になったんですよ。これも含めて、ウチならではのクオリティの商品を、ちゃんとしたタイミングで出していきたいと思っています。

――最後に、発売したばかりの最新作についてお話をお願いします。

この記事が出るころには、もう店頭に並んでいます。一番最初の扉絵を元にしていますので、多くの人にとって印象深いシーンだと思いますね。


デスクトップリアルマッコイ 06 孫悟空&ブルマ
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↑記念すべき1話目の扉絵。1話と考えると、かなりシブい。

この第6弾に関しては、扉絵のイラストだけでなく、ストーリーの中でも2人が同じバイクに乗っているシーンが何コマかあるので、そちらも参考に作りました。
例えば、バイクのメーターの形は話の中に出てきた形状に合わせてなど。あとバイク本体、前輪のすぐ後ろに左側だけダクトがあるんですけど、扉絵で見える右側だと何もない。なので左だけにダクトを付けたりと、色々なシーンを確認して再現しています。
バイクのデザインは実際には存在しない完全にオリジナルの形なので、実際動くとしたら、エンジンの配置はどこら辺にあるんだろう、とみんなで話し合ったのが楽しかったですね。バイク好きの人が見ると、タイヤが太いと思うんですけど、どうしてもドシッとしてないとカッコ悪いので、デフォルメかけて太めに調整したりとか。
今までは現実味ある乗り物が多かったのですが、今回は完全な鳥山メカということで、リアリティとカッコよさのバランスを追求した逸品になっているかと思います。
是非、店頭で実際に見てもらいたいですね。

シリーズ最新作! 「デスクトップリアルマッコイ 06 孫悟空&ブルマ」
☆発売日:大好評発売中!
☆発売元:メガハウス
☆価格:9,800円+税

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