クライマックスを迎える『ドラゴンボール超』宇宙サバイバル編を作り出した職人たち
2018/03/09 17:00
さまざまな方法で『ドラゴンボール』に関わり、『ドラゴンボール』に愛を抱き、『ドラゴンボール』ファンのために最上級の“モノ”を届ける職人たち=アルチザン。彼らに注目する連載企画、それがDRAGON BALL Artizanです。


今回はクライマックスを間近に控えたTVアニメ『ドラゴンボール超』宇宙サバイバル編はどのように作られたのか? そしてあと2回、クライマックスはどうなるのか!? プロデューサーの高見暁さん、シリーズディレクターの中村亮太さんにお話をお伺いした。


↑中村亮太シリーズディレクター(左)と高見暁プロデューサー(右)。『ドラゴンボール超』宇宙サバイバル編を中核として作り上げたお2人。

――TVアニメ『ドラゴンボール超』が今月、ついにクライマックスを迎えるという事で、お話を聞かせていただきたくてやってきました! まずお2人は、『ドラゴンボール超』にはいつから関わられているんですか?

高見暁プロデューサー(以下高見):“未来”トランクス編のちょっと前からの途中参加です。

中村亮太シリーズディレクター:僕が各話演出として入ったのは、第6宇宙編からです。そこから“未来”トランクス編でも各話の演出をさせてもらい、その後宇宙サバイバル編では、シリーズディレクターという形で入らせていただきました。

――お2人の『ドラゴンボール』との出会いは?

中村:僕は小学生の頃、毎週アニメを観ていました。小六の時に観に行った東映まんが祭りの、3本立ての映画の内の1つがクウラの出てくる『とびっきりの最強対最強』だった記憶があります。周りの友達と同じように、普通に好きだったので、東映アニメーションに入社して、担当できて光栄です。

高見:僕も出会いは小学生ですね。それこそ友達と、悟空とケンシロウはどっちが強いんだろうっていう議論をしていました。それがまさか、アニメ制作の現場に関わるようになるとは当時思ってなかったですけど。


宇宙サバイバル編のキャラクターたち



――宇宙サバイバル編はいつ頃から、どのような経緯で作られていったのでしょうか?

高見:まず前提として、『ドラゴンボール超』は、鳥山明先生の“原案”ありきなんです。だから『ドラゴンボールZ』の時にやっていたような東映アニメーションオリジナルのストーリーを作るのではなく、鳥山先生に考えていただいた原案を、東映アニメーションがどう表現していくのか、ということになっています。宇宙サバイバル編も、もちろん最初に鳥山先生の原案がありました。そこには「80人が入り乱れて戦う」と、さらっと書かれていたんです(笑)。

中村:そうでしたね。そのときに、鳥山先生の手によるキャラクター設定画も何点かいただきました。あとは大神官様が作った、力の大会の武舞台の設定画もありました。今はもう、かなり破壊されちゃいましたけど(笑)。

――最初の原案にあったのは、どのキャラクターですか?

中村:ジレンとトッポ、ディスポ、破壊神のキテラは最初に描かれていましたね。

――第11宇宙のプライドトルーパーズは鳥山先生の設定だったんですか?

中村:設定にはなかったんですが、みんな同じ赤と黒のスーツを着ていたので、そういう肉付けをさせていただきました。

高見:最初の先生の原案の中には、ジレンのキャラが性格が分かるような情報が無かったんです。これまでの『ドラゴンボール超』の強敵、ヒットやザマスは結構ニヒルでクールなキャラクターだったので、ジレンはいっぱいしゃべったほうがいいんじゃないかと考え、正義のヒーローという設定を考えました。ジレンが中心のヒーロー戦隊。

中村:そう提案したら、鳥山先生から「ジレンはしゃべらないキャラです」とお返事をいただきました。両親が殺されて、師匠が殺されたという設定も、その時に鳥山先生から来たんです。ヒットやザマスとは違う、こういうキャラクターだと。

高見:なので当初僕らが考えていたジレンのキャラクター性は、トッポに引き継がれました。

――トッポは「正義」「正義」と言っていたのに、破壊神になるというのもおもしろかったです。

中村:鳥山先生のトッポの設定に、破壊神候補というのがあったので、そこからこちらで膨らませました。ディスポはどうしようかと思っていたら、キャストが島田敏さんに決まったので、必然的に調子に乗るキャラクターとして勝手に動き出しましたね。3人の設定が決まり、それに合わせてほかのメンバーをこちらで考えていきました。


↑第7宇宙との戦いの中、ついに破壊神の力に目覚めた“トッポ 破壊神モード”

高見:第2宇宙のリブリアンの変身後の太っちょ姿も鳥山先生が描かれた設定ですね。そこに、可愛い女の子が変身して太っちょになるという設定を、こちらで加えました。

中村:第6宇宙のサイヤ人・カリフラも鳥山先生のキャラクターデザインですね。

高見:最初の原案にはいなかったんですよ。シナリオ会議の時に、ブロリーって人気だよねという話題が出たんです。

中村:そこから、我々がケールのキャラクターを考えました。

高見:ブロリーっぽいキャラだけど、そのまんまじゃおもしろくない。だから女の子にして、東映アニメーションでデザインしたんです。鳥山先生にお見せしたらノってくれて、カリフラを描いてくださったんですよ。

中村:ならばケールとカリフラ、2人のペアで行きましょうということになりました。

高見:この2人は、すごく上手くいきましたね。

中村:声優を、ゆかなさんと小松由佳さんにしたのも、上手くいった要因だと思います。

――『ドラゴンボール超』にゆかなさんが出ると聞いて、驚きました。イメージ的に、出そうになかったので…!?

中村:ですよね(笑)。ゆかなさんと、小松さんに出ていただけて、嬉しかったです。ほんと小松さんとゆかなさんの息の合った感じがすごくよかったです。ケールとカリフラがポタラで合体したケフラは、声を合わせて演じなければいけないんですよ。ゆかなさん、すごいんです。小松さんは普通に画面を見てアフレコしているんですけど、ゆかなさんは小松さんの口を見ながら合わせてるんですよ。その様子を見て、「あぁ、この2人いいコンビだな」と思いました。


↑小松由佳さんと、ゆかなさんが、息の合ったところを見せたケフラ。

かつてないバトルロイヤルに挑戦


――鳥山先生の原案には、物語はどれくらい書かれていたんですか?

中村:最初からから最後までの第7宇宙の戦士たちの流れは、文章で書かれていました。例えば、ピッコロは誰と戦って落ちますとか、最終的には誰が勝ち残りますとか。あとは第7宇宙と第11宇宙の戦いの流れも…メインのところはすべて書かれていました。

――第7宇宙の代表選手10人というのも…!?

中村:もちろん悟空からフリーザまで、鳥山先生が決めていただきました。魔人ブウと思わせておいて、最後にフリーザというサプライズも、鳥山先生のアイデアですね。先生の考えられたメインの物語に、僕らが細部を足したり、ディテールアップしていった感じです。

――80人という人数でバトルロイヤルをするアニメは、自分の記憶ではこれまでになかったと思います。まず、キャラ設定だけで大変だったんじゃないですか?

高見:そうですね、こんな大人数が一気に登場するって、なかなかないですよね。設定を作るのは大変でした。ですが、東映アニメーションで作っている『ONE PIECE』のドレスローザ編や、マリンフォードの戦いも結構入り乱れて戦っちゃっていたんで、スタッフの経験値はあったんです。これはやるしかないなと覚悟を決めました。

中村:大変なのは最初からわかっていましたから、そこは計画的に作っていきました。例えば、最初はバトルロイヤルだというのを伝えたいので、入り乱れたシーンを多くやる。そのあとは、各所での個別の戦いということにしました。

高見:やはり大勢だと目線が定まらないので、誰対誰というのに集中した方がいいというのもあります。そういう方針を作ってやったのが、見せ場も作りやすかったですし、。成功だったと思います。


シリーズディレクターとしてのこだわり



――宇宙サバイバル編でこだわったことはありますか?

中村:正直言いますと宇宙サバイバル編以前から、初期の『ドラゴンボール超』よりも映像のクオリティを高めることを、ずっと考えていました。スタッフみんなで、色々な案を出し合い、徐々にクオリティをあげていきました。“未来”トランクス編では、かなりよくなってきました。宇宙サバイバル編も作業を分担したり、スタッフ全員で連携して、ちょっとでもいい作品にしようという努力を惜しみませんでした。宇宙サバイバル編は、見せ場であるバトルシーンが多いので、少しでもよくなるように、僕の方で絵コンテをかなり直しましたね。実写のアクションなどを参考にして、バトルのバリエーションが増えるようにしました。

――秋の1時間SP(2017年10月18日放送)は、かなりクオリティが高くて驚きました

中村:あれは結構前から決まっていたので、人を投入し、コストもかけ、スタッフたちといっしょに計画して作り上げました。あの回に照準を絞ったんです。

高見:ネットなどでファンが喜んでくれてる声が多くて、嬉しかったです。もちろんストーリー的にも、すごい戦いがあって、初めてのパワーアップがあるように、もっていきました。鳥山先生から“身勝手の極意”というワードと設定、デザインをいただいていたので、あの回は悟空とジレンの戦いをメインにして、“身勝手の極意・兆”も出しました。

中村:身勝手の極意は、我々がシナリオの流れを決めて鳥山先生に報告していく中で、先生から帰ってきた悟空のパワーアップなんです。超サイヤ人とはまったく別のパワーアップということで、鳥山先生が考えてくださいました。




↑計画的にスタッフを投入し、クオリティを上げたという秋の1時間スペシャルより。

クライマックス…の前にベジータ!


――クライマックスに向かっていく中でも、ベジータの家族を想うシーンは、ものすごく印象深かったです。

中村:そうですよね。魔人ブウ編で死ぬときもそうでしたが、意外にも悟空よりもベジータの方が家族想いなんですよね。そういう意味では、原作でも最初の頃に比べて、一番印象が変わったキャラクターですよね。

高見:ベジータは力の大会が始まる前に、子どもが生まれる生まれないでそわそわしちゃって。修業も一時期中断していたし、大会始まった当初の彼のテンションが掴みにくいなと感じていました。子どもが無事に生まれたからと、すぐ戦闘モードになれるのかしら…とも考えました。ですがシナリオを進め、後半になってくると、己のプライドのため、家族のために…というのが自然な流れで出てきましたね。

中村:力の大会で自分が落ちたら、宇宙が消滅して家族も消えてしまうかもしれない。そう考えると、ベジータが実は最もモチベーションが高いんじゃないかと思うようになったんです。ベジータは言葉では絶対に言わないですけど、生まれたばかりのブラちゃんを、消滅させるわけにはいかないでしょう。そういう意味では、一番覚悟があったのではないかと思います。

高見:でも『ドラゴンボール』は、ウェットになりすぎないようにと、心掛けなきゃいけないんです。鳥山先生の作られてきた世界を守らなければいけない。その中でベジータは、ちょうどいい塩梅なんですよね。

中村:そうですね。ベジータは自分の子どもを抱き寄せて、「よしよし」とかする人じゃないですよね。普段は「フンっ」てツンとしてるけど、いざという時にトランクス抱き寄せたりとか、メリハリがある人なんです。だから高見さんが言ったように、いい塩梅でウェットになり過ぎないんです。気持ちを態度に出さないというキャラクターなので、『ドラゴンボール』では一番、家族への想いなどを表現しやすいんです。



↑ついにすべてを捨てずに誇り高く戦う覚悟により、カカロットとは違うパワーアップ、“超サイヤ人ゴッド超サイヤ人・進化”にたどり着いたベジータ。

――ベジータの描きかたには、かなり力が入っていたのではないでしょうか?

中村:そうですか? そんなつもりはなかったのですが…ベジータは、もちろん戦闘力では悟空と肩を並べる存在ですからね。でもむしろ僕としては、亀仙人とかクリリンとか「なんで連れてきたんだ」って最初言われてた戦士たちに力を入れたつもりです。鳥山先生が選んだんですから。ただ戦闘力だけを求めるなら、悟天とかトランクスとか、超サイヤ人になれる人たちを連れてくればいいだけなんですよ。でもあえて鳥山先生が、そういう人たちを選んだのには、単に超サイヤ人になって倒すだけじゃなくて、彼らを活かす闘いもやってください、というメッセージだと受け取りました。鳥山先生の戦士選抜の狙いは、そこにあったと思います。

――フリーザも悟空に気を与えるところがよかったですよね。

高見:あれは実は、鳥山先生の原案にはなかったんです。

中村:ナメック星の時と逆にフリーザが…ということで、考えました。フリーザは本当にシビアな人だと思うんです。悟空に脱落されると、フリーザも困りますからね。悟空と力の大会に来る前に、蘇らせると約束してますからね。そういう意味では、大会優勝というのは悟空とフリーザの目的は違っても、ベクトルは同じなんだと思います。そういう意味では、ああいう行動は僕は不自然じゃないと思いました。悟空のことは嫌いでも、気を与えてでもまだ生かしておいたほうが自分にとっては得だという判断です。フリーザさんは自分の目的、野望のためなら、手段を選ばない人物だと思うので。

――あと個人的には18号とリブリアンの愛の闘いはすごく好きでした。

中村:あ! ホントですか? 嬉しいです! あれもこちらで考えたのですが、リブリアンは正直言う理想論をひたすら叫んでる人なんですよ。それに対するのは、母親である現実的な18号がいいんじゃないかなと。理想と現実は違うというのを、あの戦いで見せられればなとは思いました。

――なるほど。すごく対照的な2人ということですね。戦いの最中の18号の回想でクリリンが「18号さん」「18号さん!」という所がすごくよかったです。クリリンは優しいんだなって。

中村:クリリンは、すごい人なんだと思います。愛とか簡単に言うけど、簡単なことじゃねぇんだってことです。

――18号もベジータとおなじで、普段は思ったことを見せない人ですね。

中村:見せないですね。でも『ドラゴンボール』の登場人物って基本、普段は心の中を見せないけど、いざという時にちゃんと本当の感情を見せるんですよ。みんな口に出さないけど、いざという時はみんなのこと守ったりとか、助け合ったりとかする人たち。悟空だって、普段はそっけないけど、親友のクリリンとか、息子の悟飯や悟天のことを大切にしている。18号さんだって普段言わないだけで、クリリンのこと大好きだし。『ドラゴンボール』は、基本的にそういう人たちの集まりなんだと思っています。



↑普段はクールな18号さんが、リブリアンと真の愛を賭けた戦いを繰り広げた。

――なるほど、確かにそうですね。その最たるものが、亀仙人かもしれませんね。

中村:亀仙人は普段おちゃらけてますけど、実は真面目な人ですもんね。力の大会をやっていって、思ったことがあるんです。悟空の限界突破は、ひたすら亀仙人が天下一武道会で負けた悟空に言った、「上には上がいる」という教えを貫き続けているだけなんじゃないかと。結局悟空は相手を殺すために闘ってるわけではなくて、限界を追い求めて、負けないために闘い続けてるだけなんですよね。見たことない世界だったり、見たこともない強い人に出会って、刺激を受けて、今までにない未知なる自分が出てきたらいいなって思っている人だと思います。 “身勝手の極意”も亀仙人の教えがあってこそ、それが少年悟空の『ドラゴンボール』から、『ドラゴンボール超』まで繋がっているテーマだと僕は思っています

――第7宇宙の10人も、いわば悟空が戦ってきた歴代のライバルたちですもんね。納得できました。


いよいよクライマックスへ!



――第129話で、“身勝手の極意”が発動し、ラストあと2話でどうなるのか非常に気になるところですが…!?

中村:みなさんも思っているでしょうけど、状況的に今までの敵のように、悟空がかめはめ波を撃って、ジレンがやられておしまい、という話にはならないと思います(笑)。

――なんというか、ジレンは悪ではないですからね。

中村:そうなんです。悪ではない。ジレンは色んなものを抱えてる人であって、別に悪気があって、ああいうスタンスで生きているわけではないんですよね。結果的にどちらが勝とうが負けようが、お互いのスタンスは違うけれど、闘い終わって初めて感じるものがあるんじゃないですかね。武士道みたいですけど。

――なるほど、拳で語り合うというやつですね。

中村:ジレンが悟空と闘ったことによって、なにを学んで、なにを感じたのかを、僕は子どもたちに感じ取って欲しいです。それはたぶん、現実の社会にも通じることのような気がします。自分とすべて同じ感性の人なんているわけがなくて、自分と同じ考えの人の方がむしろ少ない。この作品では拳と拳ですけど、お互いの想いをぶつけ合った時に誰もが、なにかしらを感じると思うんです。鳥山先生の考えた宇宙サバイバル編は、そういう話だと思うんです。僕はそういう解釈をして作っています。

高見:ここまで宇宙サバイバル編を引っ張ってきた中村監督が、命を削って自ら切った渾身のコンテと演出が見られますから、残り2話はホントに、「ぜってぇ見てくれよな!」と言うしかないですね。

中村:いや、そんな、たいしたことはないですけど…ただなんか、これまでにないくらいすごく悩みました。個人的には131話の終わりに関しては、結構しっくり来てるんです。宇宙サバイバル編って、悟空の物語であったんだけど、実はジレンの物語でもあるんじゃないかなと思っています。鳥山先生が、単なる悪い人じゃないジレンを最大のライバルにしたのも、そういう意図があると思うんです。そういう解釈で描いたものを、みなさんどう思ってもらえるのか…という感じですね。

高見:中村監督渾身の演出と、鳥山先生がどんな結末をこのストーリーに用意してくれてたのかを、しっかり目に焼き付けて欲しいです。個人的には「鳥山先生、まだまだ物語を用意するつもりでしょう?」ということまで感じられました。

中村:あとは物語が終わっても、そのままチャンネルは変えずに最後まで見ていただけるとありがたいですね。ちょっとした仕掛けもあります!

――本日は、長い時間ありがとうございました!



いよいよ“身勝手の極意”に目覚めた悟空…これでジレンに勝利できる!? だが中村監督の話を聞いて、まだまだラストにはとんでもない闘いが待っていそうな予感が…とにかく、3月18日と25日に放送されるクライマックス2話は、絶対に見逃してはいけません!
みなさん、楽しみに待ちましょう!!