DBMFL第22回は、映画『ドラゴンボール超 ブロリー』の制作を指揮する長峯監督にインタビュー!
2018/08/05 09:00

今回ご登場いただくのは、TVアニメ『ドラゴンボール超』成功の立役者であり、映画『ドラゴンボール超 ブロリー』で再び指揮を執る長峯達也監督です。

監督の『ドラゴンボール』に対する熱い想いはとどまることを知らず、予想以上のロングインタビューに! ここには書けないようなリアルな現場のお話から、物語の核心に関わる情報まで、盛りだくさんお話いただいた中からネタバレギリギリのラインでお届けします!

長峯達也
ながみねたつや
映画『ドラゴンボール超 ブロリー』監督。
TVアニメ『ドラゴンボール超』ではシリーズディレクターを務めた。
『ドラゴンボール』シリーズのほか、『ドクタースランプ』など数々の鳥山作品に携わる。

キャラ作りは“駄菓子屋感覚”

ーー長峯監督と『ドラゴンボール』との出会いをお聞かせください。

長峯:今、46歳なので、『ドラゴンボール』は直撃の世代ですね。中学校の時は学校の帰りに週刊少年ジャンプを買うのが楽しみでした。高校2年の時には友達と道場で『ドラゴンボール』の技を出し合ったりしていましたね。高校2年にもなって「かめはめ波ーっ!」って(笑)。男の子はいい意味でみんなアホですから。今でもその気持ちを忘れずに、アホになってアニメを作っています。

ーー『ドラゴンボール』のアニメも直撃世代ですか?

長峯:水曜夜7時からのTVアニメも家族みんなで飯を食いながら観ていましたね。ナイターでアニメが中止になると、すごくガッカリして(笑)。僕の親世代はマンガとかアニメに興味が無くて、子供が観ているから仕方なく一緒にアニメを観ていたんだけど、それでも『ドラゴンボール』は観ていられるらしいんですよ。なぜかというと、主人公と悪役のビジュアルがわかりやすい。しかもアクションなのでストーリーとか設定とか関係なしにこいつは正義、あいつは悪、で戦っているんだなと理解できてまあ観ていられる。その経験から自分がアニメを作る上で気を使っていることなんですけど、その瞬間、ぱっと観ただけで最低限楽しめる情報量を提示するようにしていますね。「わかっているだろう」という前提で作ってしまうと、お話やキャラクターに最初から興味がある人しか見てくれない、TVならチャンネル変えられちゃうし、子供に付き合って無理やり映画館に来た親御さんたちは即寝てしまう。僕なんかTVとかでチャンネルを変えてアニメが映った時、キャラクターが背中を向けて喋っていたりすると、すぐにチャンネルを変えちゃいますからね。興味が出ないので。「わかっているだろう」って作っちゃったほうが楽なんですけど、そこは面倒臭がらずにきちんと作らなくてはいけないと思ってます。演出はダサくなってしまうかもしれないけれど、常にキャラは正面を向いて、正義の味方っぽい顔をしたヤツと、悪者っぽいヤツがひとめでわかることが大切だと思います。今回の映画でも『ドラゴンボール』に興味のない人に、観てもらえるように気をつけてます。興味のない人っていうのは…子供は映画館に親御さんと行くことが多いと思うのですが、親御さんにもちゃんと観てもらえる様な作品にしたい。「さて寝るか」ではなく、親子で一緒に楽しめるような演出になるよう、心がけています。お家に帰って「映画、面白かったね」と子供とお話ができれば最高です。

ーーTVアニメ『ドラゴンボール超』のキャラクターも、わかりやすさ重視だったんでしょうか?

長峯:そうですね。キャラクターについては、その瞬間に見て楽しめる“駄菓子屋感覚”で作りました。子供の頃、駄菓子屋にカラフルなお菓子や面白いお菓子がありましたよね。瞬間的に「すげー!」って思った記憶はあるんだけど、商品名は全く覚えていない(笑)。駄菓子屋さんは子供に興味持ってもらうために一生懸命考えて作っていたんだと思うんですよ。自分もその感覚が 大事だと思うんです。その瞬間を楽しめる体験をしてもらいたいと思いますね。子供を喜ばせてなんぼの商売ですから。
TVアニメから映画『ドラゴンボール超』へ

ーー映画『ドラゴンボール超 ブロリー』の監督に決まったのはいつ頃でしょうか?

長峯:TVのアニメの『ドラゴンボール超』のシリーズディレクターをやっていた途中ですね。最後までやりたかったのですが、会社がどうしても映画やれと…。それで一緒にシリーズディレクターをやっていた中村亮太さんに任せて、劇場に専念することにしました。中村さんはすごく才能があるし、若いスタッフも才能のある人たちがいっぱい揃っていたので安心して任せました。宇宙サバイバル編は鳥山先生が気合いを入れて作ってくれたお話ということもあり、 盛り上がっていい感じに終わることができたと思います。僕は端から見てたのですが、スタッフ一同『ドラゴンボール超』という作品をつくる喜びを感じてくれて、最終回に向かってテンションが上がっていったようです。本来は3500から4000枚位の動画枚数でTVアニメ1本を作るのですが、最終話は倍ぐらい使ったようです。「倍ってなんだよ、すげーな」って (笑)。動画枚数は制作費オーバーに直結するので厳しく管理するものなんです。僕なんて昔、『おジャ魔女どれみ』で4000枚位使って先輩の監督に怒られて泣かされたことがあります。最近は東映アニメーションもやるときはやるようになりました。

ーー中村さんは「やりすぎたから、怒られた」と言っていましたが…。

長峯:いや、どんどんやってください。枚数を使うのも才能ですから。それに才能がある人間を干しておく余裕なんて現場にはありませんからね。 今回の映画もすごいエネルギーを持った人たちが集まっているので注目ですよ。作画のクオリティもどんどん上がって、大爆発するんじゃないかと思います。東映アニメーションも新社屋ができたことだし、才能がある若い人たちいっぱいだし、いい意味でヤバイことになると思います(笑)。
鳥山作品を映画にする難しさ

ーー鳥山先生の脚本を読んだ感想をお聞かせください。

長峯:僕が評価するのも失礼なくらい、鳥山先生はマンガが最高に上手いじゃないですか。今回の映画の脚本も鳥山先生の演出能力、作画能力、キャラクター作成能力とか語り口が前提になっていると自分は認識しています。原作の『ドラゴンボール』も、大筋のストーリーを文章にして読むとそうなんだーくらいだと思うんですけど、鳥山先生がマンガにすることで最高に面白いものになる。だから鳥山先生以外の人間が作品にするのは大変な作業だと思ってます。それでも、僕が子供の頃リアルタイムでジャンプで漫画を読んでいた時のドキドキワクワク感……神様がいて、さらにその上の界王様がいてと、どんどん『ドラゴンボール』の世界が広がっていく。そうしたら今度は実は悟空がサイヤ人だったという話になって、界王様でも敵わないフリーザが登場する…たまらない!! そんな感じが今回の映画でも出たらいいなと思ってます。

ーー鳥山先生の脚本を映画にする作業は、どのように進められているのでしょうか。

長峯:アクション以外では、鳥山先生の脚本をほぼそのままやっていますね。ただ、脚本をそのままやりたいんですけど、いかんせん映画の尺が短い。最初に脚本そのままで絵コンテを描いたら、90分予定の映画に対して倍ぐらいの尺になったんです。映画2本分ですよ(笑)。それをまとめるのに全部無理やり入れると、ダイジェスト映像の羅列になっちゃってつまらなくなるので、プロデューサーや関係各者のみなさんと協議していい感じにエピソードを削って尺に納めました。鳥山先生の脚本を、なるべく映画を見てくれるみなさんにお届けしたいという熱意で、上映時間もちょっとだけ延ばすことができました。
『ドラゴンボール』の昔の概念を覆す!

ーー今回の映画ではイメージを一新した作画と美術設定が話題になっています。

長峯:須江さん(美術設定の須江信人さん)は『ONE PIECE FILM Z』の時に一緒にお仕事をしたことがあったので、映画も「鳥山先生の作品にひっかけつつ、須江さんの世界観を出してください」とお願いしました。出来上がってきた設定はどれもすごく素敵です。新谷さん(作画監督の新谷直大さん)も『ONE PIECE FILM Z』のときから知っていたので、まず 「今回はどんな感じにしようか」という話をしましたね。『ドラゴンボール』は長くやって来た作品なので「『ドラゴンボール』はこうでしょ?」という慣れがあると僕は感じていました。かめはめ波の出し方も、超サイヤ人になるときの演出も、もうメジャーになりすぎてしまって定型になっている。 定型でもいいのですが、変身とか手からビームって特別なことだから、特別な演出にしたいんです。それにハッと特に気づかせてもらったのが、TVアニメの『ドラゴンボール超』の時に、鳥山先生に超サイヤ人のなり方のマニュアルをもらった時です。背中のあたりをざわざわさせて、それをイメージして広げていくと超サイヤ人になれるっていう。「これだ!!」って思いました。身体感覚を元に演出しないといけない。理屈無しに適当に変身しちゃダメなんです。自分が子供の時にかめはめ波を撃とうとしたり、超サイヤ人になろうとした時って、常に本気なんです。だからアニメのキャラクターも、さらっとやってしまうのではなく、本気でやらなければいけないと思うんです。アニメーターの方たちにも、これまでの設定は関係なしに、今の技術で自分の思うように描いてほしいという話をしています。今のアニメの技術と、 これまでの『ドラゴンボール』での表現に齟齬があるのなら、昔の概念はもう破棄してしまっていいと思うんです。悟空だって限界突破して身勝手の極意にまで進化しているのだから、それに合わせて映像も進化しなければならない。現在進行系でとにかくアクションの最前線は『ドラゴンボール』でありたい。作品を聖域化してしまうのではなく、僕たちが楽しむ『ドラゴンボール』を作りたいと思っています。
映画を彩る魅力的なキャラクターたち

ーー今回の映画にブロリーを出すことに対して、どんな思いがありますか?

長峯:実はブロリーが初登場した映画『ドラゴンボールZ 燃えつきろ!!熱戦・烈戦・超激戦』は、僕の師匠でもある山内さん(山内重保監督)が監督をやっているんです。ブロリーが出ると知ったときは、辛かったですね。「勝てないじゃん!」と思いました(笑)。でも昔のブロリーから鳥山先生がさらにキャラクター性を持たせてくれたので、僕としてはその設定を大切にしつつ、ブロリーをとにかくすごく強くしたいと思っています。いろんな技を出したり、圧倒的に強い感じを出したりしたいです。その勢いでアクションの絵コンテをいっぱいいっぱい書いたら、ブロリーのアクションパートだけでコンテの枚数が300枚から400枚になっちゃいました(笑)。

ーーブロリー以外の新キャラクターは?

長峯:チライもレモもデザインが最高にいいですよね。チライは不良少女でまだ若いんですよ。表面的な感情だけで動いて、目の前のブロリーを後先考えずに助けちゃう、そして大変なことになる。そしてレモというキャラクターがまた深いんです。フリーザ軍に何十年もいるので、可哀想な子供たちの姿もいっぱい見ていると思うんですよ。ブロリーに対する想いひとつをとっても、チライとレモのギャップがある。レモはいい人だから、ブロリーのことをなんとかしてあげたいと思うけど、自分の力の限界というのを十分わかっている。 フリーザ軍の前線の戦闘員でもなく平々凡々とやってきたレモが、ブロリーとの出会いとチライの勢いだけの行動に影響されて変化していく。この3人のバランスというものがすごく良くできていると思いますね。映画の内容に関わってしまうのでこれ以上は言えませんが、この3人の物語は注目です。


映画の新キャラクター、チライの設定画。「肌の色が緑なのに可愛いって、すごいですよね」と、監督も大絶賛。


もうひとりの新キャラクター、レモの設定画。レモとチライ、ブロリーの関係性に注目だ。

ーー悟空やベジータ、フリーザはどんな活躍をするのでしょうか?

長峯:悟空もベジータもフリーザも、見せ場がいっぱいあります!  悟空はもうかなり神に近づいていますね。ベジータはそんな悟空に必死で追いつこうとしている感じです。今回、フリーザ は特に成長していますよ。自分に自信のある傲慢なやつだったんだけど、ビルスやウイス、全王様がいる中で、どうやってトップになってやろうかと考えを巡らせていると思います。着実に強くなって、いずれは全王様を倒そうという大きな野望を抱いているのかな。流石に全王様には逆らえないかな、わからない。悟空は相変わらず「強くなりてぇ」という気持ちだけですね。
映画『ドラゴンボールZ 復活の「F」』では、悟空とベジータに対してフリーザがひとりで闘ったんですけど、よく考えたらすっごい不利ですよね。だから今回はフリーザがどうやって悟空とベジータに対抗しようとするのか、楽しみにして欲しいですね。
とにかく、映画『ドラゴンボール超 ブロリー』は、みなさんの期待に応えられるように鋭意製作中なので、楽しみにお待ちください!


長峯監督、ありがとうございました!  次回DBMFLは、長峯監督の仕事場に潜入…極秘情報も見られるかもしれません!  お楽しみに!

©バードスタジオ/集英社
©「2018ドラゴンボール超」製作委員会