DBMFL第26回は映画『ドラゴンボール超 ブロリー』の美術を担う須江信人さんと小倉一男さんにインタビュー!
2018/09/02 09:00

かつてない壮大なスケールで制作中の映画『ドラゴンボール超 ブロリー』。
宇宙規模の物語とバトルを彩る美術へのこだわりも凄まじく、背景美術専門のスペシャリストたちが制作を担当しているのだ。
今回は映画『ドラゴンボール超 ブロリー』の美術設定の須江信人さんと、美術監督の小倉一男さんに、美術のお仕事や映画の見どころについてお伺いしたぞ。


須江信人
すえのぶひと

背景制作会社 株式会社草薙 代表取締役社長
映画『ドラゴンボール超 ブロリー』の美術設定を担当


小倉一男
おぐらかずお

背景制作会社 株式会社草薙 美術統括
映画『ドラゴンボール超 ブロリー』の美術監督を担当

ーー映画『ドラゴンボール超 ブロリー』の美術を担当することになった経緯を教えてください。

小倉:監督の長峯(達也)さんとは映画『ONE PIECE FILM Z』でご一緒していたので、その縁もあって「今回の映画は美術関係にも力を入れたい」ということで、お話をいただきました。
『ドラゴンボール』は学生時代から漫画も読んでいたので、まさか仕事で関わるとは思ってもいませんでした。光栄ですね。

須江:僕は『ドラゴンボールZ 神と神』の時に、美術監督をやっている会社から手伝いを頼まれたのが、『ドラゴンボール』の最初の仕事でしたね。

ーー美術について長峯監督からはどのような指示がありましたか?

須江:映画ということで、TVとは違うクオリティで作りたいということでした。世界観の設定もTVとはかなり変わってきているので、もう好きにやっていいということでしたね(笑)。TVはTV、映画は映画のディテールで、さらにバージョンアップしたいということでした。

ーーではまず、美術というお仕事について教えてください

須江:今回の映画ではまだシナリオが完成していなかったので、最初に「こういう場所が出ますよ」という文章での説明と、設定、リスト、それに付随する原作やTVアニメ、映画シリーズの資料をいただきました。そこからさらにイマジネーションをふくらませるために、他作品の資料を参考にして、ドラゴンボールの世界観に入れられるデザインを詰めていくというのが、美術として最初のラフを作る作業ですかね。僕の場合はラフの段階でジャッジをする意味で色感も入れています。ラフが荒いので色でごまかしているという部分もあるんですけど(笑)。「こういう色です」というのがラフの段階で出ていれば、実際に色を塗る時にわかりやすい。だからベースの世界観の色は踏襲しながら、あえて「このくらいでどうですか」という色感をつけて提出して、修正要項をフィードバックさせた線画をクリーンナップさせます。それが出来上がった時点で、美術監督の方で本番用ディテールを加味したボードについての打ち合わせをします。実際に本番の色を付けた時に存在感がどう出てくるかですね。そして線画では面であるものを、色付けして立体的にする。

ーー美術ボードは全部で何枚くらい描かれるんですか?

小倉:同じ場面でも何種類か描くので、40枚くらいですかね。短いシーンの場合はボードを作らずに本番の背景がボードになります。本作なら、中国風の山とかワンカットしか無いところがそうですね。そういう本番の背景がボードになるものに、これから取り掛かるところです。

――美術ボード1枚にどれくらい時間がかかるのですか?

小倉:大きさによって違いますが、今回一番大きかった惑星ベジータのボードは、他と並行しつつ、3日くらいはかかったと思います。

ーーすべてPCで作業されるのでしょうか?

須江:そうです。今は全部PCでやっていますが、僕たちはもともと筆で描いていた世代だから、最近まで筆で描いていました(笑)。

小倉:この間まで、筆で描いていましたね(笑)。

須江:筆の時代を経験してきた人が多いので、デジタルで描いても、観た人には筆で描いた絵に見せたいという想いがあるんです。だからどうしても筆描きっぽくしたくなる(笑)。今回は3Dの背景もあるので、筆描きっぽくすると3Dで対応できなくなってしまうので、3Dにしやすいように考えて描いています。

ーー『ドラゴンボール』ということで、特に意識した部分はありますか?

須江:『ドラゴンボール』のカラーにこだわりました。彩度を絞ってリアルな色にするのではなく、『ドラゴンボール』独特の明るいカラーにしています。難しかったのが、地球と他の惑星をどういうふうに差をつけるか。岩の形状や空の色を変えたり、地球にないものを描かないと、地球と同じに見えてしまう。形状や色で地球との違いを出して、空気感から違う惑星だとわかるようにしました。

小倉:『ドラゴンボール』の雰囲気からかけ離れないように、基本的には先生が描かれた漫画原作を手がかりにしながら、それを広げる形で作成をしています。観た人に「ぜんぜん違うじゃん」と思われないように、「漫画のこの部分を映画ではこう変えたんだな」という発展形に捉えてもらえるように意識しました。

須江:一番最初のラフのやり取りの段階で、長峯監督から「思いっきりやっちゃっていいよ」と言われていたので、これまでの作品感を加味しながら、けっこう思い切った感じのデザインを集英社さんや鳥山先生に提案しましたね。そうしたらOKをいただけたので、そこからデザインを詰めていきました。

小倉:今回の映画では西の都のように『ドラゴンボール』らしいところよりも、新しい惑星などがたくさん出てくるので、その点はやりやすかったですね。惑星ベジータもこれまでの資料にはない場所の設定もさせていただきました。

須江:細かいところだと自然物の質感にもこだわっていますね。特報に出てくる南極の山もそうです。漫画で描かれたディテールよりは、もっと密度感があって細かい感じになっています。

ーー今回はスペースオペラということで、地球以外の惑星も出てくるんですよね。新しく出てくる惑星はどのように考えられたんですか?

須江:例えば、今回初めて出てくる惑星バンパという星に関しては、鳥山先生が「巨大な谷があって、池のような場所に生き物たちが棲んでいる」というイメージボードを描かれていました。なので、鳥山先生のイメージボードを元に岩の形状を有機的なテイストにして、惑星ベジータとは違った雰囲気にしました。

――惑星バンパ!? さりげなくお話していただきましたが、これはスクープ情報ですよ! 惑星バンパという星が登場するんですねえ。

須江:そうなんです。地球以外の星でメインとなるのが惑星バンパと惑星ベジータになります。

――その惑星バンパの美術ボード、見せてもらえませんか…?


小倉:これが惑星バンパの美術ボードです。

――おおっ! これが鳥山先生のイメージボードを元にして作られたんですね!

須江:「イメージカラーは黄色」という先生の指示も意識して、惑星ベジータや地球と差別化しています。

ーー惑星ベジータに関しては、これまでのアニメにも登場していますが、その設定などを参考にされたのでしょうか?

須江:そうですね。過去のTVや映画の設定を元に、スケール感を上げていくような考え方ですね。惑星ベジータは王の城とかロングの背景に近いものもあったので、そのシルエット感を踏襲しつつディテールを詰め直しています。宇宙基地なども鳥山先生が描かれた雰囲気をキープしながら、規模感を広げるようにしました。宇宙船などは大きく変えてしまうとミスマッチになってしまうので、基本的には原作のイメージを大切にしました。


ーー他の作品とやり方の違いはありますか?

須江:意外と自由にやらせていただけたので、やりやすかったし、楽しかったですね。最初の段階で集英社さんと鳥山先生から「この線で詰めればいいです」と言っていただけたので、落とし所はわりと早い段階で見えてきました。

小倉:「こうしてください」と言われたのは、3つくらいでしたね。その中の1つに「それぞれの惑星に、モチーフみたいなものを出してほしい」という要望でした。惑星ベジータだったら惑星ベジータ特有の円だとか四角とかキーになるデザインをどこかに入れてほしいと。そういうご要望を受けて、ラフからどんどん直して詰めていきました。

ーーでは今回の作品で、お2人が特にこだわった部分を教えてください。

小倉:「美術のスケール感をアップさせたい」という監督からの熱い想いがあったので、とにかくスケールを大きくしようと心がけました。宇宙が舞台なのでこじんまりとさせるのではなく、広がりがある感じを意識しましたね。それが画面でどれくらい出てくるか楽しみにしています。

須江:僕がこだわっているのはブルマの別荘ですね。最後までとっておいて、じっくりやろうと思っている部分です。地球の中でわりと大規模に出てくる、新しいロケーションだったので。

小倉:監督から参考資料にと、監督が個人的にアマルフィに旅行した時の写真をもらいましたよね。あとアマルフィの写真集も。

須江:偶然、僕もアマルフィは好きで画像も結構集めていたんですよ! ブルマの別荘はアマルフィを意識して白をベースにしながら若干カラフルな色づかいにしました。カプセルコーポレーション系の丸い建物で、シルエットは『ドラゴンボール』の世界ですけど、ロケーション的に入江を囲んで段々になっている感じはアマルフィのイメージです。

小倉:屋根はオレンジにしたいですよね。あの建物だとどこからが屋根だかわからないけど(笑)。

ーー最後に、映画『ドラゴンボール超 ブロリー』の美術の見どころを教えてください。

須江:今までのTVや映画の『ドラゴンボール』の流れから、いい意味で「今回は違う」という雰囲気が伝わればいいなと思います。「背景もカッコいいな」と感じ取って欲しいですね。クレジットを見て「草薙が描いているんだ!」って気がついてもらえればと思います(笑)。

小倉:鳥山先生にも「おっ!」と驚いてもらいたいですね。今までのシリーズにはない存在感のある世界観を美術で表現できていると思います。長峯監督らしく、アクションシーンがふんだんにあるようなので、背景はきちんと見えるのだろうか…と心配ですが(笑)。


映画『ドラゴンボール超 ブロリー』公開の時には、みなさん背景にも注目ですよ!

次回のこのコーナーでは、須江氏と小倉氏の仕事現場をレポートします!
今回もちょっぴりお見せしましたが、来週はもっと美術設定や美術ボードをお見せします。お楽しみに!

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