DBMFL第28回は、映画『ドラゴンボール超 ブロリー』のCG制作を担当する横尾裕次さん、牧野快さん、福長卓也さんにインタビュー!
2018/09/16 09:00

『ドラゴンボール』といえば、迫力満点の激しいバトル! 映画『ドラゴンボール超 ブロリー』では、今まで見たこともないような臨場感あふれるバトルが展開される。その重要な役割を担うのが、CGによる映像だ。
今回はCGで超次元の映像を創り上げる、横尾裕次さん、牧野快さん、福長卓也さんに、CG制作のお仕事やCGならではの演出の見どころなどをお話していただいたぞ。


横尾裕次
CGプロデューサー
TVアニメ『ドラゴンボール超』、映画『ポッピンQ』などを担当。


牧野快
CGディレクター
映画『ドラゴンボールZ 復活の「F」 』、映画『ドキドキ!プリキュア マナ結婚!!?未来につなぐ希望のドレス』などを担当。


福長卓也
CGラインプロデューサー
映画『ドラゴンボールZ 復活の「F」 』、映画『ONE PIECE FILM GOLD』などを担当。

ーー『ドラゴンボール』との出会いを教えてください。

横尾:小学生の頃に、週刊少年ジャンプを読んでいましたね。ちょうど小学生の頃に、ベジータが地球に来たところをやっていました。初めて悟空が界王拳を使うシーンとか、ワクワクしながら読んでいました。『ドラゴンボール』ごっこもよくやりました(笑)。

牧野:保育園の頃にTVアニメの『ドラゴンボール』をやっていて、中学から高校生の頃にコミックスを全部読みました。物心ついた時から知っている作品なので、仕事で関わることができて本当に幸せです。みんなに自慢したいですね(笑)。

福長:僕は父親が漫画が好きだったので、家にあったコミックスを読んでいました。小学生の頃にTVアニメの『ドラゴンボールZ』をリアルタイムで観ていて、『ドラゴンボール』は再放送で観ていました。

横尾:それぞれ世代も仕事上の立場も全然違うのですが、『ドラゴンボール』のことなら夢中になって男子会話ができますね。『ドラゴンボール改』や『ドラゴンボール超』の影響で、今の少年たちも『ドラゴンボール』に夢中になっているじゃないですか。実家に帰ると、自分が読んでいたコミックスを甥っ子が読んでいたりするんです。年代が違っても同じ目線で話せる、日本で唯一の作品だと思いますね。

ーー映画『ドラゴンボール超 ブロリー』の脚本を読んだ感想をお聞かせください。

牧野:ブロリーが出てくるということで、すごくワクワク感を感じました。

横尾:ブロリーの昔の映画を思い出しましたね。脚本を最後まで読んで、いろいろ気になることも…!?

福長:自分はちょっと現実的な見方をしてしまって「ああ、CGのシーンがいっぱいあるなぁ」と嬉しくなりました(笑)。絵コンテの段階でシナリオをさらに膨らませていて、絵コンテを見るのも楽しみでしたね。

ーーCGのお仕事というのは、具体的にはどのようなお仕事をされているのでしょうか?

牧野:まず「モデリング」といって、設定や色指定をしたデザインを元に立体の造形を作ります。キャラクターをデザイン通りに起こしたり、背景はジオラマのようなものを作って、どこから見ても大丈夫なようにしていく、“形”を作る作業ですね。ただ“形”を作るだけだと、そこにフィギュアがあるだけのような状態になってしまうので、そのあとにちゃんと人間っぽく動くように骨を入れたり、メカならギミックが動くような仕組みを入れたりする「セットアップ」という作業をやったうえで、やっとアニメーション作業に入っていきます。アニメーション作業はセットアップしたモデルを実際の背景の中に持ってきて、演技をさせて、カメラを構えて、最後はコンテのような絵を作っていくという作業です。あとはそこに「エフェクト」を足していきます。最後にそれらを合体させる「コンポジット」の作業をします。アニメで言うところの撮影ですね。撮影と同じソフトを使っているので、そのソフトのファイル形式で撮影さんに渡せば、互換性を持ってやってもらえるようになっています。その一連の流れをそれぞれの担当者に割り振っていくのが我々の仕事です。

横尾:自分はCGプロデューサーとして、社内のスタッフだけでなく、協力会社を含めた座組やスケジュール調整、予算関連を担当しています。細かいところは牧野くんと福長くんにビッチリとやっていただいているので、自分は見ているだけですけどね(笑)。

牧野:横尾にトップで見てもらいつつ、全体的な管理を福長がやり、実際の技術的なことは僕が頭に立ってやっています。クオリティの管理など、現場的なところは僕のほうでやらせていただいて、総合的な判断が必要なところはプロデューサーの横尾に相談をしつつ進めています。

ーーみなさんは『ドラゴンボール』シリーズのどの作品からCGを担当されているのでしょうか?

横尾:自分はTVアニメ『ドラゴンボール超』の時からですね。“未来”トランクス編ではエフェクトや背景の一部を手伝って、宇宙サバイバル編では力の大会の武舞台をCGで作りました。

牧野:僕が初めてお仕事で関わったのは『ドラゴンボールZ 復活の「F」』の時ですね。

福長:自分は『ドラゴンボールZ 神と神』。荒野や森林などの背景のモデリングチームの管理業務でした。デザイナーがかなり苦労していたのを覚えています(笑)。

ーー『ドラゴンボール』らしいエフェクトはどのようにして作られているのでしょうか?

牧野:過去の資料がたくさんある作品なので、昔の映像を参考にすることが多いですね。作画が得意としている“形”とCGが得意としている“形”は違うので、作画で描いてもらったものをCGで配置するなどの工夫をして、作画とCGの違和感がないようにしています。今回の映画に関しては長峯達也監督から「昔の作品に合わせることが必須ではない」と言われているので、昔のイメージをある程度踏襲しつつ、CGならではのいいところをどんどん入れていくようにしています。

ーーCGならではのいいところとは?

牧野:一言で言い表すのは難しいですが、実際の世界で起こるような物理的な動きやリアルな煙など、実際の自然現象に近いものはCGで割と簡単にできます。あと同じものが同じ場所に色んな角度で大量にある表現は、CGの得意とするところです。作画だと1つ1つ描くので大変だと思います。逆に難しいのはいわゆる作画ならではの“形”ですね。自然にはないような“形”だったりするので、そういうものはCGでは難しいですね。

ーー作画とCGとでどのような役割分担をされていますか?

牧野:よくCGで作るのは、モブといわれる群衆です。同じようなキャラクターが大量にいるような場面ですね。1体1体に特別なポーズや表情をさせる必要はないけど、とにかく数がほしいというところはCGを使うことが多いです。この作品に限らず、群衆のシーンはCGで作ることが多いと思います。あとは今回の作品でもやらせていただいていますが、空間を活かしたダイナミックなアクションシーンですね。上手いアニメーターの方の場合は作画でも見栄えがするんですけど、人数や時間が限られているので、作画でやりづらいような特殊なカメラワークや長回しのカットなどのオーダーも受けています。

ーーたとえば『ドラゴンボールZ 神と神』でいうと市街地をダイナミックに移動するところとか?

牧野:まさにそういうところですね。背景が動きながらカメラが移動するという一連の動きをすべて作画でやろうとすると、かなり大変なんです。そういう場合は実際に3D空間の中にセットを作って、キャラクターを置いて、カメラを動かしたほうが作りやすい。

福長:CGだと実写のセットの中でカメラを回している感覚で、現実ではできないようなカメラワークをつけられますからね。

ーーよりリアルに、ダイナミックに見せたいところにCGを使うわけですね。

牧野:そうですね。シナリオやコンテの段階で「ここはCGでいこう」ということを決めたら、そこに出てくるキャラクターは基本的にCGで作る流れになります。全てのキャラクターのCGを作ると、使われないキャラクターも出てきてしまうので、コンテの設計の段階でCGにするものとしないものをハッキリと決めてから作っていきます。

ーー今回の映画ではキャラクターのモデリングを何体ぐらい作られたのでしょうか?

牧野:悟空とベジータ、ブロリーなどですが、超サイヤ人やレッドやブルーにも変身するので、作るモデルは結構ありましたね。ブロリーもちょっとずつ形態が変化していくので、それぞれのモデルを作りました。ブロリーに関しては体型からなにから変わってしまうので、まったく別のキャラクターとして作るような感じでしたね。あとはバトル中に服が破れたりもするので、作るCGはどんどん増えていきました。


ーーキャラクターのモデリングに関して、作画監督の新谷直大さんと細かい部分を話し合ったりするんですか?

牧野:CGは造形を作るモデリングの部分がかなり重要なんです。ここで最初に間違ってしまうと、間違えたままの状態が最後まで続いてしまうので、早い段階でざっくりと作ったものを新谷さんに見ていただきました。新谷さんの修正を反映しながら、さらに作り込んでいきました。

ーーCGというとゲームの印象が強いのですが、ゲームはよくやりますか?

牧野:普段、あまりゲームはやらないのですが、『ドラゴンボール ファイターズ』は気になってプレイしました。CGのキャラクターがかなりよくできているなぁと思いましたね。

福長:ビジュアルがCGっぽくなくて、アニメのような感じになっていて、凄いと思いましたね。

牧野:僕たちはそれを超えるようにしないと(笑)。

ーーCGに関して長峯監督からの指示はありましたか?

牧野:作画の中にCGを足すシーンは、作画に合わせるためにあらかじめ設計図のような指示をもらいました。バトルシーンのようにほとんどCGで完結するようなカットは、監督から指示を書き加えたシナリオを頂いたので、それを元にCGで動きをつけていきました。

横尾:通常は絵コンテがあって、作画さんにレイアウト(原図とも呼ばれる、背景の構図、キャラクターの動きに関する設計図。)を描いて頂いて、それに合わせてCGのキャラクターをのせるという流れが一般的なんですけど、今回のバトルシーンの一部は絵コンテから全てCGでやっているんです。「CGでやらせてください!」と、こちらから監督にお願いをしたので、ちゃんと結果を残さないと(笑)。

牧野:作画さんがレイアウトを描くと、動きが平面的になってしまうことがあるんです。レイアウトからCGでやれば、CGにするのに都合のいいレイアウトを作ることができる。今回の映画ではかなりのチャレンジをしています。

ーー『ドラゴンボール』ならではの、こだわりの部分を教えてください?

牧野:一番力を入れているのが、バトルシーンですね。「CGで自由にやっていい」と言われてはいるのですが、CGのバトルシーケンスの前後に作画でのバトル部分があり、挟まれているので、CGのバトルシーンで急にテンションが落ちてしまわないように気をつけています。長峯監督の演出は激しいバトルが魅力ですから。最初の頃に作ったCGのムービーは大人しい印象だということでした。だからなるべく、作画のテンションについて行けるように頑張っている最中です。

横尾:バトルのテンポ感ですよね。CGの場合はバトルの一連が勢いで流れてしまいがちで、観ていて印象に残りづらいことがあるのですが、作画の場合はキーとなるポーズを繋いでアニメーションさせているので、観ていて印象に残るし、作画ならではのテンポ感があるんです。

牧野:今はそのテンポ感を作画に近づけるように、調整をしているところです。

福長:実はCGでは、キャラクターの顔が一番大変なんです。作画は画面がアップになったらアップになったなりの描き込みができますが、CGは基本的には変化しないものが動いているので、カメラが寄るとCGっぽい顔になっちゃうんです。表情にも気をつけて、違和感の無いように作りこんでいます。




ーー鳥山先生とのやり取りはありましたか?

牧野:今回の映画で初めて、キャラクターのモデルを見ていただきました。新谷さんの修正も含め、完成度を上げた状態でお見せできたので自信はありましたが、実際に良い評価をいただけましたね。「別のアングルからも見てみたい」と興味を持っていただけたので、非常に嬉しかったです。

ーーそれでは最後に、映画を楽しみにしている読者のみなさんにメッセージをお願いします。

牧野:世界中のみんなが知っている作品のCGということで、こちらも闘っているような気持ちで作っています。その熱い気持ちを感じながら映画を見ていただけたらなと思います。みなさんの期待に応えられるようなものを作りますので、楽しみにしていてください。今回は色々な場所で闘うので、何回かバトルの場面が変わるんです。その中の1か所はCGでしかできないような背景を使っています。普通は実際の荒野や海などを元に立体化するのですが、そのシーンに関しては完全に元のイメージがないんです。監督のほうから「CGの特徴を活かした新しいものを作って欲しい」というオーダーをいただいたので、「普段ではできないことをしよう!」ということになりました。技術的な話になってしまいますが、リアルタイムで膨大な情報量の物を常に動き回らせるようなことが得意な「Unity」というソフトがあるんです。ゲームなどでよく使われているソフトなんですが、今回はそれを使って、異空間のような実際にはない場所でバトルをさせています。

横尾:ソフトに「こんな感じの雰囲気」という情報を与えると、ソフトが「こんな感じでどうでしょう」というCG世界を作ってくれるんです。それを見て僕らも「うわぁ、こんな感じになるんだ!」と驚いています。異なる次元を数式に現して、それを3D化しているんです。他の作品でやった手法を今回の作品でさらに発展させているのですが、僕はいまだに理解できていないですね(笑)。

福長:今までと違ってコンピューターの計算だけで生成しているので、人間がイメージできる映像ではない新しい表現になっています。今回は監督から「完全に自由にやっていい」と言われたので、チャレンジすることが出来ました。みなさんが初めてご覧になる映像になっていると思います。

牧野:そのシーンは、かなりの見どころになっていますので、ご期待下さい!


映画『ドラゴンボール超 ブロリー』では、どんな凄いCG映像が観られるのか!? 期待が膨らみます!
次回のこのコーナーでは、CG担当のみなさんの仕事の中身をちょっぴり紹介します。お楽しみに!

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