DBMFL第21回は、映画『ドラゴンボール超 ブロリー』のプロデューサー林田師博さんに直撃インタビュー!
2018/07/29 09:00
ドラゴンボールムービーフロントライン、歴代映画19作のレビューが終わり、いよいよ今回から毎週、映画『ドラゴンボール超 ブロリー』の全容に迫っていきたいと思います!

今回ご登場いただくのは、東映アニメーションの林田師博プロデューサー。

前作『ドラゴンボールZ 復活の「F」』から劇場版を担当している林田プロデューサーに、『ドラゴンボール』との出会いから、知られざる新制作体制のお話など、映画『ドラゴンボール超 ブロリー』に関する気になることをたっぷりとお話していただきました。


映画『ドラゴンボール超 ブロリー』プロデューサー
林田師博
はやしだのりひろ

TVアニメ『ドラゴンボール改』魔人ブウ編、映画『ドラゴンボールZ 復活の「F」』のプロデューサーを歴任。

大好きな『ドラゴンボール』に仕事で関わるまで

ーー『ドラゴンボール』との出会いを教えてください。

林田:『ドラゴンボール』の連載が始まったのが中学3年生くらいの頃だったので、そのものズバリの世代でした。当時はみんな週刊少年ジャンプを毎週買って、食い入るように読んでいました。ほかの連載作品もオールスターでしたからね。みんなそれぞれ好きな作品がある中で、『ドラゴンボール』は僕も含め、みんなが大好きな作品でした。『ドラゴンボール』もそうですが、『Dr.スランプ』を初めて読んだ時は衝撃的でしたね。世界観もストーリーも今までに見たことのないものばかりで、子供ながらにすごいと思いました。
『Dr.スランプ』が終わって、鳥山先生が次は何をやるのかなと楽しみにしていたら、今度はギャグ満載のアクション漫画で。当時はジャッキー・チェンのコミカルで明るいカンフー映画が流行っていて僕も大ファンでした。そのテイストが色濃く反映されている『ドラゴンボール』は、もう夢中になって読んでいましたね。

ーーお仕事で最初に『ドラゴンボール』に関わったのはいつ頃からですか?

林田:2012年頃、当時所属していた海外ライセンスチームで海外向けに『ドラゴンボール改』の魔人ブウ編を作った時ですね。国内でも放送することが決まり、本格的に『ドラゴンボール』に関わるようになりました。なかなかない関わり方ですよね(笑)。その流れがあって、『ドラゴンボールZ 復活の「F」』でもプロデューサーを担当させていただきました。

ーー映画『ドラゴンボールZ 神と神』からは、鳥山明先生が深く関わるようになりました。その経緯をお教えください。

林田:今の時代だからこそできる『ドラゴンボール』をやりたいという製作スタッフの想いから、スタートしました。正直「今やっても受け入れられるのか」という意見も多かったです。ところが鳥山先生に原案を書いてもらったら、これがものすごく面白い! 先生の原案を元に脚本を作り、映画『ドラゴンボールZ 神と神』は大ヒットしました。それから間もなく、次の作品では先生ご自身に脚本を書いてもらいましょうという話になったんです。集英社さんに「次は先生に脚本をお願いします!」と何度もお願いしましたね。そういう流れがあり『ドラゴンボールZ 復活の「F」』で先生自ら初めて映画の脚本を書いてくださったんです。
鳥山先生がご友人を通じてお知り合いになられたマキシマム ザ ホルモンの「F」という曲(フリーザのことを歌った曲)を聴いて、インスピレーションを得てフリーザを復活させることになったんですけど、この脚本がめちゃくちゃ面白かった。特にセリフの言い回しって、先生が書いたものとそうじゃないものとは全然違うんですよね。やっぱり原作の先生が書くとこんなに面白くなるのかと本当に思いましたね。お話を盛り上げっぱなしにするのではなく、きちんと緩めるところをポンポンポンと入れる、テンポの緩急が実に素晴らしい。
あと絶妙な伏線を張っているんですよね。原作の漫画でも、当時はわからなかったけど後になって「ああ、あのときのあれがこうなってくるんだ」という伏線の張り方に何度も驚かされました。原作はエピソードをどんどん継ぎ足していったと思うのですが、それでもストーリー構成は完ぺき! 絵ももちろん素晴らしいのですが、『ドラゴンボール』の本当の魅力はその物語性だと僕は考えています。先生はまさに稀代のストーリーテラーです。持って生まれた才能ってこういう事を言うんだろうなと思います。天才です。先生には、これからもたくさんの物語を書いてほしいですね。
鳥山先生の本気度と海外を見据えたスケジュール

ーー映画『ドラゴンボール超 ブロリー』では先生とどんなやりとりをされているのでしょうか?

林田:前回、映画『ドラゴンボールZ 復活の「F」』をやって、鳥山先生はこういうふうに映画を作りたいんだなというのをしっかり学ぶことができました。これまでのアニメ『ドラゴンボール』の作り方とは明らかに変わったと思います。先生が魂を込めて作成したシナリオを尊重し、集英社さんのご意見もちゃんと吸収して、それをアニメで忠実に再現する。今作、映画『ドラゴンボール超 ブロリー』からは、集英社さんにドラゴンボール室ができたこともあり、すべての行程においてチェックをしていただいています。
例えば設定で言うと、今までは「できました」とまとめて一式お渡しする形だったため、先生にチェックしていただく時間を十分に確保できていませんでした。でも今回は去年の6月にシナリオを受け取り、10月くらいからアニメ用の設定などを逐一確認をしていただいています。ドラゴンボール室のみなさんで決めきれないところは、鳥山先生に確認していただいているんですよ。伊能さん(集英社ドラゴンボール室 室長 伊能昭夫)が先生と密にやり取りをされているので、チェックバックがすごくはやくてスムーズに進んでいます。こういう体制は、今回の映画から変わったところだと思います。本当にありがたいですね。さらに今作では、これまでと比較にならないほど多くの設定画を先生に描いていただいており、先生の本気度をひしひしと感じています。


ーー余裕を持ったスケジュールは、やはり海外での上映を視野に入れてのことでしょうか?

林田:そうですね。今回ははじめから海外を念頭に入れてマーケティングしていくという題目を与えられているので、作る側もすごく意識しています。特報をご覧になっていただいたみなさんにはわかると思いますが、映像も海外を意識したものになっています。3月に海外のオフィシャルサイトで特報を公開したんですけど、反響がすごかったですね。1日で250万から300万くらいの視聴がありました。元々『ドラゴンボール』は海外で絶大な人気を誇る作品で、反響もすごかったのですが、最近では『ドラゴンボール ファイターズ』のような海外人気の高いゲームもリリースされて、どんどん新しいファンが増えているという実感はありますね。
新たな製作陣で映画完成へ向け本格始動!

ーー映画『ドラゴンボール超 ブロリー』では、製作陣が一新しましたね。

林田:今回からアニメ用のキャラクターデザイナーが新谷さん(作画監督の新谷直大氏)に変わっているので、デザインが変わったことに対して「これいいじゃん」という人がいる一方、違和感を感じている人もいるので、そこが最終的にどういう結果になるのか、蓋を開けてみないとわからないですね。こういう反応は想定内で、「変える」とはそういうことだと自分は思っています。でも今回は鳥山先生のシナリオが抜群に面白いので、デザインが変わろうが、しっかりしたクオリティを担保できていれば、そこで勝負できると思っています。違和感を感じている人も動いている映像を観れば納得していただけるはずです。
長峯監督(監督の長峯達也氏)は優秀な演出家で、『ドラゴンボール超』のTVシリーズを盛り上げた貢献者でもあります。今回、僕はプロデューサーとして、アニメ作品の根幹をなすスタッフである監督と作画監督を人選する際、社内スタッフを起用することには特にこだわりました。社内スタッフを育てるということはもちろんですが、胸を張って「東映アニメーションで作りました」と言える形にしたかったからです。
一方、美術スタッフは思い切って変えました。いろんな意見はありましたが、映画ならではのスケール感を出すことに長けている外部スタジオにお願いしています。実際に背景をご覧になったら「こういうことがやりたかったんだな」と、きっと理解していただけると思っています。背景は本当に大事です。実はキャラクターが占める部分は、画面の3~4割位なんですね。観客が観ているそれ以外の絵というのは背景なわけなんですよ。一新した背景とキャラクターがどう馴染むのか、僕自身も本当に楽しみです。

ーー鳥山先生らしい『ドラゴンボール』を作るために、プロデューサー目線で意識していることは?

林田:鳥山先生の最近の素立ちのキャラって、細マッチョというかスッとしていて、今っぽいですよね。一方アニメの絵は筋骨隆々でムキムキのままだったので、アニメーターには原作者の鳥山先生の絵をイメージして描いてもらうようにしています。あらためて家にある『ドラゴンボール』の原作や画集から僕の好きな絵を20点ほど選んで、オーディションを受けてもらったアニメーター陣に渡して、それをベースに描いてもらいました。先生の原作の絵に近づけていくということを意識しています。

ーー映画の制作はこれから本格化していく感じでしょうか?

林田:そうですね。今回は日本公開からそれほど間を空けずに海外でも上映するということで、吹き替えの作業をはやく進めなきゃならない。映画というのは0号試写と初号試写というのがあって、0号というのは最終チェックを行うもので、初号は完成品なんです。でも多くの作品は制作がタイトで、0号イコール初号みたいになってしまっていて、そこからの直し(リテイク)はできていないのが現状なんです。でも今回は関係者の意向で「直す期間をちゃんと持ちましょう」ということで、早めに0号試写をやって、海外の吹き替え作業をしてもらうのと同時に、リテイクをギリギリまでやることでクオリティを上げたいと思っています。
海外は海賊版対策もあって、なるべくはやく上映してもらおうということで、海外の配給会社と公開時期を調整しています。本作はスケジュールも人のやりくりもかなり計画立ててやっているので、いい方向に進んでいると思います。やっぱりこういう大作を作るときって、きちんと順序立ててやらなきゃいけないなと改めて感じましたね。特に『ドラゴンボール』は日本の宝といえる作品ですから、大事に作っていかなくてはならないと思います。
テーマは“壮大なスペースオペラ”!

ーー最後に映画『ドラゴンボール超 ブロリー』の見どころをお聞かせください。

林田:伊能さんが最初に「今回のお話は“壮大なスペースオペラ”です!」とおっしゃっていたんです。そんなの『ドラゴンボール』でできるのかな? と思っていたのですが、シナリオ読んでみて「なるほど!」と思いました。“スペースオペラ”と『ドラゴンボール』がどう結びつくのかというのは、観てのお楽しみです。製作陣も一新して、チャレンジの多い作品ですが、お題として与えられている“「壮大な」スペースオペラ”感をしっかりと出せるようにしたいと思います。ぜひ、映画館でご覧になって下さい。

©バードスタジオ/集英社
©「2018ドラゴンボール超」製作委員会